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オンラインピアノレッスン(ソロボイシング)
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オンラインピアノレッスン(基本ボイシング)で基本的なボイシングについては説明した。
これを使えば一応全てのジャズの曲は演奏できるだろう。
だがピアノソロで演奏するには、ベース、コード、メロディーを全部弾かなければならない。
Aパターン、Bパターンを弾きながらベースもメロディーも弾くとなると、かなり忙しい。
ピアノソロには独特のボイシングテクニックが必要となる。
ジャズの歴史を紐解きながら見てみよう。
ストライドとは「またぐ」という意味である。
ベース音を弾いてから急いでコードも弾くという左手の動作から来ている。
1910年頃まで流行したラグタイムという音楽にストライドピアノの発祥がある。
ラグタイムではベース音は単音もしくはオクターブである。
コードは極めてシンプルで、テンションの全く入っていないトライアドかセブンス程度までである。
基本的には1泊目と3泊目はベース音(ダウンビート)で、2泊目と4泊目がコード(アップビート)であるが、それに限定される訳ではない。
代表的な作曲家にスコットジョプリンがいる。
譜面に書かれているので学習・研究しやすい。
通常は4拍子ではなく2拍子で記述される。
これはラグタイムのリズムの元となったのがマーチだからである。
ラグタイムに取って代わったのはデキシーランドジャズである。
ニューオーリンズを中心として今でも根強い人気がある。
ラグタイムと、後述するニューヨークスタイルの中間を埋める存在である。
ベースとコードは基本的にラグタイムと近い。
管楽器がメインなので、ピアノはリズム楽器としての脇役となる。
管楽器は集団即興演奏と呼ばれる、全員が一斉にアドリブをする演奏を行うことも多い。
その場合はバッハの音楽のように対位法的に複数の旋律が織り成す音楽である。
ラグタイムから発展したのがスイング時代に一斉を風靡したストライドピアノである。
ベース音は単音、オクターブに加えて7度、10度が使われるようになった。
7度と10度が両方入っている場合もある。
その場合はダウンビートがコードの骨格も表現できるため、さらに5度を加えて補強することもある。
ダウンビートが連続して「歩いている」ような雰囲気を出すこともあるが、これをウォーキングベースと呼ぶ。
コードも複雑になり、7度までの音が使われることが多い。
9度、13度も使われることがあるが、あまり多くは見られない。
代表的なプレーヤーにアートテイタムやテディウィルソンがいる。
この時代になるとアドリブをするのは当然のこととなり、譜面に残されているものは少ない。
ストライドピアノはニューヨークスタイルとも呼ばれる。
一方でシカゴを中心とした地域では1920年代にブギウギと呼ばれるピアノスタイルが流行した。
ウォーキングするベースラインが中心で、コードは右手でベタ弾きすることになる。
アドリブの際にはコードを左手で弾くこともあるが、ベースも弾かなければならないため、ローインターバルリミットを無視した低域で弾く場合もある。
ベースラインは極めて単調で、同じフレーズが永遠と繰り返される。
ブルージーな曲には向いているが、ハーモニーを突き詰めていくという方向性は見られないため、ジャズとして取り立てて重要視することはない。
ブギウギは後にロックンロールへと引き継がれていく。
ニューヨークスタイルのストライドピアノのダウンビートとコードだけを取り出したものをスプレッドと呼ぶ。
この場合左手でダウンビート、右手でコードを弾くことができるので、同時に弾いてもよい。
やはりAパターンとBパターンがある。
左手でルートと7度、右手で3度、5度(または13度)、7度、9度とする(Aパターン)
左手でルートと10度、右手で7度、9度、3度、5度(または13度)とする(Bパターン)
IIm7-V7に応用すると、IIかVのどちらかがAパターンで、他方がBパターンとなる。
ジャズのバラードの伴奏では今でもスプレッドは多用される。
スプレッドのボイシングを見ると左右の手で重複して弾いている音がある。
Aパターンの場合は7度、Bパターンの場合は3度である。
よく観察してみると、これらの音は高いほうの音から数えて2番目の音である。
右手からこの2番目の音を外したのがドロップ2である。
その場合、新たに2番目の音となった、元々3番目の音をテンションに変えることがある。
ドロップ2ではさらに発展させて、Aパターン、Bパターン以外のボイシングに対しても、上から2番目の音を1オクターブ下げる処理が行われる。
このためドロップ2のボイシングはかなり応用範囲が広い。
特にメロディーにボイシングする場合には極めて効果的である。
問題はベース音を弾くときに音域的に届かない場合がでてくることである。
また1オクターブ下げた音がローインターバルリミットに引っかかることもある。
キーや音域によってはフレキシブルにできない場合もあり、そのためにわざわざ曲を移調したり、かなり高めの音域でボイシングすることを強いられる場合もある。
ベース奏者が居ればかなり問題が軽減される。
これはドロップ2と同じ考え方で、上から数えて2番目と4番目の音を1オクターブ下げるというものである。
マイナーセブンスやセブンスコードはスプレッドでボイシングしやすいが、トニックコードは当てはめにくい。
そのためトニックに対してはドロップ2&4が用いられることがある。
ただしトニックに限定されるものではない。
これは重複音を抜くというのと逆の発想で、あえて一番高い音と同じ音を1オクターブ下に付け加えるという手法である。
このとき1オクターブ下の音を左手で弾くが、その様子が左右の手がロックされているように見えることからこの名がある。
ジョージシアリングが多用することから、シアリング奏法と呼ばれることもある。
1オクターブ下の音はグリッサンド的に、少し下の音から始める場合もある。
また一番高い音と2番目の音の両方を1オクターブ下げることもある。
ドロップ2と同様、ベース奏者が居ない場合は制約を受けることがある。
今回も「It Could Happen To You」を素材に、ドロップ2を基本にしたボイシング例を紹介する。
この曲はAA'構成の32小節だが、冒頭はドロップ2、17小節目~20小節目にかけてはロックハンドを使用している。
譜面ではなく音で聞けるようにした。
この響きの違いを体感して欲しい。
ボイシングの説明が主目的なので、リズムはルバートである。
アドリブも弾いていない。
また今回はその他の曲についてもドロップ2を基本としてボイシングした例を挙げておく。
全てドロップ2という訳ではないし、別のコードへのリハーモナイゼーションも行っている。
今後は譜面も紹介しながら解説していこうと考えている。
質問や意見等があればメールいただきたい。
Feb, 16th, 2010
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